2/11(日)午前中に学会発表を終えて、すぐにニューヨークへ。
ニューヨーク大学で開催された歯内療法科の卒後研修プログラムを受講しました。
歯内療法というのは神経を抜いたり、根の先に出来た病気を治すための治療です。
ニューヨーク大学歯内療法科はアメリカで一番歴史があり、日本人の岡崎先生が教授を務めておられます。一昨年にインプラント研修を受けた際に、イブニングセミナーをしていただき、もっと時間をとって教えてもらえる機会がないかと思っていたところ、一週間の卒後研修プログラムが開催されることが決まり楽しみにしていました。
虫歯になった歯を長持ちさせるためには、まず神経を抜かずに残すことが大切なのですが、もし神経を抜くことになったときには、どれだけ質の高い治療が出来るのかで歯の持ちが大きく左右されてしまいます。
歯内療法というのは、いわば歯を残すための最終治療です。
神経をとる治療、やりなおす治療はどの歯医者さんでも日常的に行っているのですが、
・神経をとる治療の成功率は85%(1割以上には症状がでたり、根の先に病気ができます)
・再治療の成功率は50%(回数と期間をかけてもあまり治りません)
にしかすぎません。
歯を長持ちさせるためにはこの成功率を上げることが効果的ですので、日本でも様々な研修を受けました。とても勉強になり、日々の治療に用いているのですが、日本で受ける1~2日間の研修は、講師の先生の考え方や経験に基づいた講義になり、やり方指導、道具の使い方指導がメインとなってしまいます。
今回、世界基準での最新の考え方を「偏ることなく」学んできました。
講義はもちろんですが、患者様でのデモンストレーションや実習など充実したプログラムになっていて、頭の中がとても整理できました。
当院でも近日中に、顕微鏡・CTスキャン・ロータリーファイルを使った治療を自費治療とはなりますが導入・提供するようにいたします。
(日本では保険の範囲で出来ること、使える道具に制限があります)
また最終日にはシガーソン教授による、歯の外傷についての講義がありました。
これはとても勉強になりました!
関学ファイターズに関わらせてもらっていることもあり、骨折などでなければ外傷に対しても対応しています。数か月に一度の頻度ではありますが、歯が折れた、歯が抜けた、口の中がきれて血が止まらないという患者様が来院されます。
現在2014年に決まった日本のガイドラインに沿った治療を行っているのですが、現在ではマイナーチェンジがされていて、その最新ガイドラインを学ぶことが出来たのは今回の研修における予想外のGIFTとなりました。
こういった海外研修を受けると、勉強できる以外に2つのメリットがあります。
・一つ目は同期の素晴らしい先生方に出会えること、
・二つ目は現地に留学し頑張っている先生に出会えること です。
同期のすばらしい先生方
海外に1週間もの研修に出かける先生というのは、非常に少数だと思います。医院を休診にする時間的・費用的なデメリット、患者様が離れてしまう怖さ、言葉が通じない場所での不安、たくさんあります。
参加されている先生方は、勉強熱心であることはもちろんですが、1週間休んでも患者様にも迷惑をかけない環境を作り上げた先生方がほとんどです。
全国的に名前の知られている先生方が同期としてたくさんおられました。
唯一、私がそのような立場ではないのが心苦しいのですが・・・、
日本でそのような先生方と一度に知り合い、お話しできる機会はまずありません。
研修中、懇親会、研修外で教えていただく知識や経験・アドバイスは本当に勉強になります。
現地に留学している先生方
ニューヨーク大学は世界各地から留学生を受け入れています。今回の研修でも様々な国(日本、韓国、ブラジルなど)からの留学生(大学院生)がサポートをしてくれました。
日本だと箔をつけるため、博士号や専門医という資格を得るため、人間関係などから大学院に進学することも多いのですが、海外では全く違います。
言葉の問題ももちろんですが、授業費用(年間約1000万の授業費がかかるようです)や、入学へのハードルの高さ、課せられる課題の多さは想像を絶します。
いろいろな壁を乗り越え、頑張っている20代の若い先生方を見ると、自分の置かれた環境のありがたさと、もっと頑張らないといけないという意欲をもらうことが出来ました。
今回は学会発表準備で直前までバタバタしていて授業後の予定を考えていなかったのですが、狭いマンハッタンですので、一昨年までの研修で大体のことは分かるようになりました。
今回が三週間目の滞在となります。今までやったことがないことをしようと思い、オペラやバレー、クラシック鑑賞を。
どれも半分子守歌のようなものにはなってしまいましたが・・・、いい経験でした。
帰りのフライトまで半日時間が空いたこともあり、今まで駆け足でしか見ることのできなかったメトロポリタン美術館をじっくり鑑賞することができました。
絵画の筆遣いや、マスコットにもなっているカバが実は足の3本は折れて補修されていることなど、いろいろな発見がありました。大満足です!
機内では時差調整と、研修内容の復習を。
患者様には長期の休みをいただきまして、大変ご迷惑をおかけしました。
学んだことを日々の診療に活かし、当院のミッションに掲げている「一生笑顔で過ごせる人生のサポートを」出来るよう取り組んでいく所存です。
この半年、私の中では激動の時間でした。
スタッフが大きく入れ替わる予定になり、身内の相次ぐ逝去、いただいたたくさんの学会発表の機会・・・。
開業してちょうど10年目。
医院を今後どうしていくのか、私が今後どうしていきたいのか、見つめなおす必要が出てきています。
まだ明確な答えは出ていませんが、
歯科医師としての仕事が大好きで、そのための勉強も苦でない事、幸いにも手先が器用でやりたい治療が提供できること、それを理解してくださる患者様やスタッフに恵まれていることは本当にありがたいことだと思います。
歯医者はたくさんあり、患者様には選択肢が山のようにあります。当院では、どこでも受けられる治療ではなく、予防歯科をベースにしたうえで保険治療の枠にとどまらず世界基準の質の高い治療を提供したいという開業当初の思いは全く変わりません。
最後になりますが、
このように海外研修を受けに行けるのは、家族の支えと辛抱があるからこそです。
寂しい思いをさせているであろう子供たち、
そして私のことを理解し、協力し、留守を守ってくれている、愛する妻に感謝し、報告を終わらせていただきます。
院長