麻酔が効かない! その理由と対策
豊中市 ますだ歯科医院 院長の増田です。
「以前の歯医者で麻酔が効かなくてしんどい思いをした・・・」とおっしゃる患者様が多くいらっしゃいます。
歯科治療において痛みを伴いそうな場合、麻酔をしてから治療にあたります。
でも麻酔は万能かというと、状態によってはいくら麻酔をしても「痛みが取れない」「しびれているのに削られると痛い」ということが起こります。
本当にお辛いと思います。
でも麻酔が効かないというのは歯医者にとっても大きなストレスで、「我慢してもらえばいい」とは誰も考えていないはずです・・・。
体質により麻酔が効きにくい方もいらっしゃいますが、非常にまれです。
ほとんどの場合は理由があって”麻酔がきかない”状態になっています。
その理由と対策について説明させていただきます。
歯科麻酔のしくみ
治療前に麻酔の注射をしますが、歯の神経には直接麻酔が出来ません(歯の神経は堅い歯に守られているため)。
歯に麻酔を効かせるために我々は“歯ぐき”に麻酔を行います。
歯ぐきに注入された麻酔薬が骨の中に浸透し、さらに歯根の先端にまで浸透することで初めて歯に麻酔が効きます。これを「浸潤麻酔」といいます。
直接歯の神経に麻酔が出来ない事が「麻酔が効かない」ことがある大きな理由です。
こんな場合には麻酔が効き難いです
・下の奥歯
下の奥歯はお口の中でもっとも硬く、分厚い骨に覆われています。
歯ぐきに麻酔をしても骨の中に麻酔が浸透しにくく、「歯ぐきの感覚はまったくないのに、歯は痛い」ということが起こりやすい部分です。
・痛みのある場所への麻酔
痛みのある部分は、痛みのない部分に比べて本当に麻酔がききにくくなります。
痛みがきついほど、痛みが長く続いているほどその傾向が高くなります。
また血流が豊富になっているため、麻酔をしてもすぐに成分が血流により全身へと流されてしまい麻酔がすぐに切れてしまうという問題も起こります。
・腫れている場所への麻酔
腫れている所に麻酔をする場合や、膿のたまっている部分に麻酔をする場合、麻酔液を入れた分 余計に腫れが起きるため麻酔が痛く、麻酔の効果も低くなります。
・歯磨きがきちんとされておらず歯ぐきがブヨブヨな場合
歯ぐきがブヨブヨなところに麻酔をしても麻酔薬が漏れ出してしまうので十分な効果が得られません。
・骨格のしっかりした方
骨格のしっかりした方は骨が硬く分厚い傾向が高いので、全体的に麻酔が効きにくい傾向があります。
一番麻酔が効きにくいのはこんなケース
痛みがある下の奥歯を治療しないといけない時
歯医者が麻酔をする時に一番困るのが、「下の奥歯がズキズキ痛むんです・・・」という状態の時です。
特にひどい虫歯で神経を抜かないといけないような場合にはスムーズに麻酔が効くことの方が珍しいくらいになります。
大きな体の男性が「下の奥歯が大分前から痛かったんだけど、とうとうズキズキ痛んで我慢できなくなりました」というような場合はいくら麻酔をしても残念ながら十分な効果が得られないことが多いです。
豊中市・ますだ歯科医院での対策
麻酔が効きづらい方に対しては、様々な対策をとって治療を行います。
1.通常よりも多くの麻酔を行います
2.麻酔をして、通常よりも時間をおいて治療を始めます
3.腫れていたりして痛む場合には、まず応急処置と内服薬で痛みを鎮めてから、日を改めて麻酔を行います
(例:親知らず周囲の歯ぐきが腫れて痛いようなときには、いきなり親知らずを抜くのではなく、まず洗浄と抗生剤、痛み止めで痛みをとってから、日を改めて抜歯します。)
4.伝達麻酔を併用します
下の奥歯の治療で麻酔が効きにくいことが予想される場合には、歯の神経のもっと中枢側の太い神経に麻酔をします(伝達麻酔といいます)。効果が高い反面、下顎半分、唇や、場合によっては舌までが長時間にわたって麻痺します。
5.歯根膜麻酔を併用します
上記対応をとっても麻酔が効いていない場合には、歯と骨との境目にある歯根膜という部分に麻酔をします。効果が高い反面、麻酔のダメージが残りやすく、麻酔が切れた後も数日~数週間「噛み合わせると痛い」という症状が続くことがあります。
6.髄腔内麻酔を併用します
最後の手段としては、歯に神経までの穴を空けて、直接神経に麻酔をします。ここまですれば必ず麻酔が効きますが、この麻酔は非常に痛いです。歯医者としても出来ればしたくありません。
痛みのない治療/麻酔を効かせるために必要なこと
・痛みがきつくなる前に治療を受けましょう
痛みがない部分の歯科治療で麻酔が効かないということはほとんどありません。麻酔が効きにくかった場合でも量を増やすか時間を置くかで十分に対応できるようになります。
痛みがある場合はあまり辛抱せずに早めの受診をお勧めします。
一番いいのは定期的な検診により、痛みが全く無いうちに病気を見つけ、治療を行うことです。
・治療時間に余裕をもって治療を受けましょう
麻酔が効きにくい場合には麻酔の量を増やしたり、麻酔方法を変えたり、麻酔が効くまで時間をまったりして対応します。
麻酔が十分に効くまで30分くらいかかることもあります。
「30分で治療を終了して下さい」というようなご要望があると、辛抱してもらって治療せざるをえないことが当然起きます。
痛みがある場合の治療時には治療時間が予定より延長しても大丈夫なように時間の都合をつけていただくことをお勧めします。
特に初診の時には実際お口の実際お口の中を見させてもらって初めて麻酔が効きやすいか、治療時間がどれくらいかかりそうかが分かります。予定通りに治療が終わらないことを前提として、十分な時間の都合をつけていただいて受診されると幸いです。